『咬合印象法』特設ページ
(2018年8月15日 7:33 PM更新)
術者側の手順(動画)
3M™ ESPE™ の イントラオーラル シリンジは
ミキシングチップのようにディスペンサーにセットでき、
取り外して口腔内注入シリンジとしてそのまま使用できます。
寒天の印象用シリンジと同様に、指先で繊細な操作が可能なので歯肉縁下にも正確に注入できます。
また、ミキシングチップ+口腔内注入チップに比べ、チップ内に残る印象材は3分の1に削減(3M社HPより)。
ディスポーザブルなので衛生的な上、スタッフの省力化に寄与します。
咬合印象法のアシスト(動画)
ヘビーボディ印象材をトレーの両面に手早く盛り付ける作業は
女性の筋力では難しい場合が多いので
松田歯科医院では自動練和機 Pentamix3(3M社)を使用しています。
やや高価な機械ですが練和スピードが従来品の2倍で操作が簡単なため、
歯科での経験が少ないスタッフでも時間をかけずに正確なアシストを行えます。
個人トレーの作成
適合の良い義歯を作成するためには個人トレーが欠かせません。
しかし、ラボに外注すると1週間前後の納期がかかり、
術者サイドが意図した形状で作られるとは限りません。
また、個人トレーや咬合床の作成は手間がかかる割には技工料金が安いため
ラボにとっても、ありがたい仕事とは言いづらいようです。
個人トレーを院内で自作できればアポイントを開ける必要がなくなり、
義歯作成にかかるコストを軽減できます。
従来から使われているオストロン等の化学重合型レジンは、
練和してから作業が可能になるまで時間がかかり、重合収縮が大きいため
適合の良いトレー・咬合床を作るのに向いていません。
各社から発売されている「光重合型レジンプレート」は、
容器から取り出せばすぐに作業を始められ、術者が納得のいく形態にしてから硬化できるので
大幅に作業時間を短縮できます。
(BSAサクライ社の919トレーLCは他社に比べて安価に設定されています)
それでは、「光重合型レジンプレート」を使用した個人トレーの作成方法についてご説明します。
①ブロックアウトのためにパラフィンワックスを作業模型に焼き付けます
②必ず作業模型の上にポリエチレンフィルム等を置いて、ワックスと直接触れない状態でレジンプレートを圧接します
ワックスと接した状態でレジンを重合させると、
熱のせいでプレートの表面にワックスが焼き付いてしまいます。
ワックスが残ったままだと接着剤の効果が著しく下がりますので、
口腔内から撤去する際に印象材がトレーからはがれやすくなってしまいます。
こびりついてしまったワックスを除去するのは非常に手間がかかりますので、
必ずポリエチレンフィルム等を使用して下さい。
石膏が硬化した後トレーから印象材をはがす際に、
しっかりと接着できていることを実感できるはずです。
③レジンプレートを成形します
④レジンプレートを光重合させて完成です
レジンプレートをしっかり成形してから重合を行えば、
硬化後の修正はほとんど必要ありません。
技工用の光重合器をお持ちでない先生には、
ATDジャパン社のコンパクトUV光重合器が安価なのでお勧めしています。
咬合床の作成
適合が良好で変形の心配がない咬合床は個人トレーよりも簡単に作成できます。
①レジンの分離剤(アクロセップ等)を模型に塗布し乾燥します
②模型上に光重合型レジンプレートを敷いて基礎床を作成します
重合後のプレートは非常に硬いのでアンダーカットを超えないように注意して下さい
(着脱時に模型を削ってしまいます)
光重合型レジンプレートで作成した咬合床は適合が良好で薄くできるので、
辺縁を延ばしすぎていなければ、口腔内での浮き上がりはほとんど見られません。
③レジンプレートを重合し、パラフィンワックスでロウ堤を付与します
ロウ堤は通常通りに患者さんの来院前に作成していただいて結構です。
別な方法をご紹介すると、基礎床のみを準備して口腔内で適合と咬合状態を確認してから
ロウ堤を焼きつける手法もあります。
咬合を見ながらロウ堤を付与したほうが時間を短縮できるケースも多いようです。
ロウ堤を作成するタイミングについては、先生のお好みで決めて下さい。
ファイバーポストを用いた支台築造
2016年4月から健保適用となっているファイバーポストと築造用レジンを使用する支台築造。
歯根破折のリスクを軽減できる上に鋳造の必要もありませんが、
口腔内で煩雑な操作を行うのは負担が大きくなることも、、、
チェアタイムの短縮と確実な支台築造を両立するための取り組みについて詳しくご紹介いたします。
①コア作成のための印象採得
寒天アルジネート印象で問題ありませんが、硬化がシャープで弾力性の高い寒天が望ましいです。
松田歯科医院ではデントロニクス社のデントロイド レギュラー スーパーグリーンを使用しています。
寒天注入用のシリンジは先端の針の径が細く長めの製品がポストの印象には適しています。
②石膏模型の準備
硬石膏で模型を作成した場合は、表面に硬化剤を使用してからレジンの分離剤を塗布します。
分離剤はアクロセップ等で十分です。
③ファイバーポストの試適・調整
ファイバーポストを模型に試適して必要な長さを確認してから切断します。
切断にはダイヤモンドディスクやバーを使用しますが、
YDMヤマウラ社から販売されているファイバーカッターも便利です。
ファイバーポストの調整が終わったら、リン酸等で表面を洗浄、
しっかり乾燥してからプライマーでシラン処理を行います。
(シラン処理の前には水分を完全に飛ばす必要がありますので、
寒天のドライコンディショナーが有用です)
④コア用レジンの築盛
ファイバーポストに素手で触れないように注意して模型に挿入します。
ポストの周囲からコア用レジンを盛って、支台歯の形態を回復していきます。
※コアの破折を予防するために
上顎前歯部のように咬合力が側方から作用する部位では
ファイバーポストの破折が起きやすくなります。
また、ファイバーポストは細長い円柱状なので、
ロート状の根管では歯頸部付近で歯質とポストの間に大きな隙間が開きやすく、
太いファイバーを選択すれば根尖部に届かず維持が不足します。
サンメディカル社が開発したスリーブタイプのファイバーを
ファイバーポストと併用すれば、上記の問題が解決できます。
破折強度は4倍程度まで向上し、根管内での維持を損なうことなく
歯質との適合が改善されます。(スリーブは健保適用外の製品です)
同様に健保適用外の製品となりますが、
(株)ヤマキンから発売されているハイブリッド型硬質レジン「Twiny」は
非常に強度が高いのでコアの破折を防ぐのに有用です。
Twinyは操作性がよく付形しやすいハイブリッドレジンですが、
エステニア等と同様に加熱重合処理が必要です。
⑤コア用レジンの重合
光重合型レジンでコアを作成した際は
作業模型から取り外して最終重合を行います。
コアを外しにくいときは、模型ごと水につけておくと
外しやすくなります。(アルギン酸系分離剤を使用した場合)
⑥コアを接着するセメントシステムの選択
器具の到達が難しくなる臼歯部でも確実に接着を行うためには
化学重合を選択する方が安全だと考えています。
(前歯部でしたら、光重合型のシステムも悪くない選択だと思います)
ただ、多くの化学重合型レジンは重合開始剤にアミンが含まれていますが、
接着性モノマーとアミンの相性が悪いことが知られています。
そのため、アミンを使用していないセメントを選ぶことが大切になります。
次に、根管内の水分について考えます。
水分が存在することでレジンの接着力が著しく低下する
ことは、今さら言うまでもありません。
しかし、根管内の完全な乾燥が非常に難しいのも
臨床医にとっては常識ですね。
エアーやペーパーポイントなどを用いた通常の方法では
根管の深い部分の接着不良が防げない、という報告も
あります。
そこで、水分の残留を前提として
接着システムを見直してみました。
わたしが注目したのは「ウェットボンディング法」です。
「懐かしいな」と感じられる先生もいらっしゃるかも
知れませんね。
水分、有機質の含まれる割合がエナメル質に比べて高い
象牙質にコンポジットレジンを確実に接着させるために
ウェットボンディング法は開発されました。
以前、日本で販売されていたウェットボンディング用の
ボンディング材『シングルボンド』(3M社)は
テクニックセンシティブで術者によって臨床成績に
大きな差があるということで販売は中止されました。
しかし、3M本社のある米国では現在でも
『シングルボンド』は継続して販売されているのです。
http://solutions.3mae.ae/3MContentRetrievalAPI/BlobServlet?lmd=1329906671000&locale=en_AE&assetType=MMM_Image&assetId=1319221649312&blobAttribute=ImageFile
ウェットボンディング法の術式をしっかりと守れば、
他のボンディング剤と比べても遜色のない接着力があることを
大阪歯科大学の山本一世教授が報告されています。
『象牙質の湿潤状態がウエットボンディングシステムの接着性に及ぼす影響につ いて』
山本一世 大阪歯科大学歯科保存学講座
山本教授の論文によると、ウェットボンディング材は
乾燥しすぎてしまうと接着力が低下してしまいますが
根管内ではその心配はありません。
注意点として、根管内の水分を残さず置換するために
ボンディング材を相当量窩洞に満たさなくてはなりません。
まとめますと、
・マニュアルの記載内容をしっかりと守る
・ボンディング材を十分な量使用する
という二点を守れば、ウェットボンディング材は
水分のある根管内でも良好な接着力を発揮します。
ウェットボンディング材として現在でも日本で販売されているのが
Kerr社のオプチボンドユニバーサルです。
光が届きづらい根管内では化学重合でセメントを固めるのが確実
ですので、オプチボンドユニバーサルと化学的に反応して
硬化するセメントを選ぶ必要があります。
同じくKerr社から発売されているマックスセム・エリートは
オプチボンドユニバーサルと接触することで重合が促進され
接着力が強く、アミンも含有されていません。
つまり、オプチボンドユニバーサルとマックスセム・エリートの
組み合わせは、水分の残存する根管内で安定した化学重合型の接着
を行うのに非常に適しているわけです。
最近は、色調の変化を見ることで硬化の進行が確実に判断できる
マックスセム・エリート クロマも発売されています。
(接着力はマックスセム・エリートと同等)
長くなりましたが、最後に松田歯科医院で使用している
コア装着のマニュアルをご紹介します。
《準備》
1.患者さんのレントゲンを用意する
2.セメント除去用の超音波チップを取り付ける
3.ロールワッテを用意する(上顎1ヶ、下顎2ヶ)
4.ストレートハンドピースを取り付ける
(水はださない、回転数は中、小さいカーボランダムポイントを用意)
5.マックスセムを冷蔵庫より出す
6.セメントの量が十分残っているか確認
7.コアセット用セメントチップを用意
8.白いプラスチックトレーにエッチング剤と小スポンジを取り出す
9.ブローチ綿栓を根管の数だけ用意する(前歯は1、臼歯は2~3)
10.ボンディング剤と細長いマイクロブラシを用意
《術式》
1.根管内にコアを試適し、エッチング剤で表面を洗浄・水洗・乾燥
2.根管内にオプチボンドユニバーサルをたっぷり塗布し40秒待つ
3.エアー乾燥
4.根管内のボンディング剤をブローチ綿栓で拭き取る
5.窩洞内にマックスセムを注入
6.コア圧接
7.余剰セメントをブラシで除去
8.硬化を4分間待つ
術式は簡便ですので、慣れれば術者のみでも問題なく
行えるようになります。
ファイバーコアの接着に不安をお持ちの先生は
ぜひお試しください。